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ブログ/2017-09-27

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農業栄えて農学滅ぶ?! - 分析と総合を考える ―

横井時敬の言った「農学栄えて,農業滅ぶ」とは真逆の「農業栄えて農学滅ぶ」ではないかと最近思い始めている.すでにそのことは始まっているのではとも思う.いくつかの農学系の大学で「農学部」の名前が消えたことはその象徴かもしれない.

水田で無施肥・無農薬の米作りを始めて11年目に入った.江戸時代に開発された「多数回中耕除草」は,明治以降忽然と消えた.その「多数回中耕除草」を無施肥・無農薬栽培で再現することを目指してきた.多数回の中耕除草を行うだけで,米が多収できるという,まるで魔法のような,非科学的にもみえる課題である.

この仕事,時間がかかる.幸い稲作農家で大学院生になった(なってくれた)荒生くんと一緒にやってきたのでイネの栽培は心強かった.それでも,初めてのポット苗つくりやポット苗の機械移植作業は近くの農家や農機具屋さんのお世話になった.育苗ハウスは使わず,露地で苗づくりをすることにした.耕起・代かき・コンバイン収穫は農場に頼んだ.そのほかのこと,苗つくり,移植,中耕除草,水やりなどは自分たちでやるようにした.

いろいろ試行錯誤を繰り返し,5年ほどたってようやく農家の方にも自信をもって見てもらえるようになった.それからさらに5年,始めてから10年たってようやくイネづくりの全体像が見えてきたかと思う.

「科学は分析と総合が車の両輪と同じ」,と言われることがある.しかし,現実には分析が優先している.微細に,さらに微細にと分析することが行われる.この理由の1つが,論文が書きやすいことを上げることができよう.

論文を作ることこそが「目的」のように学会も,研究機関・大学も,世間さえもそう思っているふしがある.そういう私も「論文数など問題にしなかった」と言えばウソになるが.

論文を数多く書くには対象を単純にし,方法を精緻にし,データを比較し,考察しやすいのは,分析的方法である.研究が分析法中心になる1つの要因である.

しかし,実際の農業は分析中心では立ち行かない.農業は複雑系の極にある.1粒のコメが発芽し,苗になり,成長し,花が咲き,実るまでには様々な因子が関与し,その相互作用を考えるだけで気が遠くなる.論文が書きにくい.結局,誰も手を出さなくなる.「圃場で1日中調査するため弁当を3つ持って試験場に通った」などという話は,もはや「語り草」の域を超えて,忘却の彼方にある.

無施肥・無農薬と多数回中耕除草によって,毎年同じ水田で,収量が慣行栽培並みに穫れるようになった.しかし,分析中心の目からは“風が吹けば,桶屋が儲かる”ようにしか見えないであろう.かつて分析的研究に精をだした自分としては,そのことが理解できないわけではない.
ただ,もう一人の「農家(もどき)」になった自分の目からは,総合研究の重要さと必要性を痛感する.このままでは,「農業栄えて,農学滅ぶ」になるのではないか,と.

私たちの田んぼを見学に来る方が最近では結構多くて対応に忙しい.どういうわけか地元の方は少ないが,今年も北海道から兵庫・和歌山あたりまで,たぶん200人は超えたであろうか.このうち研究者は2組,数人だけ.あとはすべて農家の方たちであった.ただ,私ももうすぐ74歳.黄金色に輝き始めた田んぼを見ながら,そろそろ終わりにしなければなー,と感じている(K),

追:そういえば,MHKの全員が退職してから実際の農業に関わっている.これも何かの因縁でしょうか.M・Hさんは畑,私は田んぼ.うふふ.

・・・・ 過去のブログ記事・・・・
2017-08-04 スイスと日本の森林管理について
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2016-09-29 How water drops impact soil surfaces のご紹介
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