Quick Homepage Maker is easy, simple, pretty Website Building System

塩害の程度の数値化

塩害の程度の数値化

塩害の程度を数値化する                   

1.はじめに
 灌漑農業を行っている半乾燥地では塩害の被害を受けている農地がある。灌漑に伴う塩害は我が国では起きないので,調査地は外国になる。塩類土壌と作物生育に関しては,アメリカの塩類研究所(US Salinity Laboratory)が1954年に出版したUSDAハンドブック60が現在も使われている。そして塩濃度を飽和抽出液の電気伝導度で測定している。飽和抽出液は後述のように抽出するまでに手間暇がかかり,実験室が無い海外調査では難しい。ここに紹介する方法は飽和抽出液の取り方と測定を工夫した簡便な方法である。

2.飽和抽出液について
 USDAハンドブックに使われている飽和抽出液の作り方は次のようである。風乾細土に脱イオン水を加えスパチェラでかき廻しながら水で飽和したペーストを作る。飽和になったことは土が光る,容器を叩くと流動性があるなどで確認する。この飽和した土を濾紙を介してブフナロートにのせ,減圧して水を抽出する。

3.今回採用した飽和抽出液採取法
 これに対して簡便な方法は,素焼きカップを飽和土壌に挿入し吸引することで抽出液を集める。以下は新疆ウィグルのタリム川支流に広がり,灌漑により塩害を受けた綿花畑で土を採取し,ホテルの自室で分析した時の手順である。

① 調査地で採取しポリ袋に入れた土の土塊を出来るだけほぐし,底部を不織布(三角コーナーを切っ て使った)で覆った直径3.1 cm,高さ3.5 cmの塩ビ円筒に土を約3 cmの高さになるように充填す る。

② 充填し終えた塩ビ円筒を写真1に示す格子容器(7列x10行なので70個の塩ビ円筒が入る)に   入れ,幹線用水路から採取した水(ECは0.45 dS/m)により底部から飽和させる。飽和は土の表面が 光ることで判断し,容器の底に過剰な水が溜まらないようにする。

③ 写真2に示す外径5 mm,長さ30 mmの素焼カップをビニールチューブ(内径3 mm )に接続  し,5 mlシリンジを用い灌漑用水を吸引してカップを水で飽和させる(素焼カップの素焼部の間隙 は0.1 ml,カップ円筒部の空間は0.3 mlで合計0.4 mlの水が入る)。

④ その後,5 mlシリンジを用いてチューブ内を加圧し,カップ内の余分な水を排水させる(素焼間 隙の水0.1 mlは,内径3 mmのビニールチューブの水柱1.4 cmに相当する)。

⑤ 素焼カップを飽和した土に挿入し,ビニールチューブの水柱が約3cmになるまでシリンジで吸引 する(写真3,4)。

⑥ 素焼カップをビニールチューブから外し,素焼カップ内の水をポリエチレン製のミニスポイトで集 め,ECを測定する(Horiba, B-173)。スポイトに集まる水は約0.2 mlであり,ECメータの受感部に 必要とされる水として十分な量である。

⑦ 素焼カップ内に残った水を,素焼カップを振ることにより排除する。

⑧ シリンジにより素焼カ ップを通して灌漑用水を吸引し,ビニールチューブに約3 cmの長さ入れ る。

⑨ ビニールチューブ内の水を捨てた後,シリンジで加圧することにより素焼カップ内に残った水を排 水させる。

⑩ 5に戻る。

 

写真1

 
 

写真2

 

画像の説明

 

画像の説明

 

4.測定例
 塩害は1つの畑の中でも一様では無いことが綿花の草丈やスポット状に存在する裸地部から明瞭であった。そこで,綿花の生育の悪い場所を通るトランセクトと生育の良い場所を通るトランセクトの飽和抽出液の塩濃度を調べた。両者とも,東から西へ1.5, 4.5, 7.5, 10.5, 13.5, 16.5, 19.5 mの地点において,別項で紹介した土柱採取器を用いて地表から深さ45 cmの土を採取した。採土は各地点において3回行い,0-5, 10-15, 20-25, 30-35, 40-45 cmの5層に分け,深さ別に同一のポリ袋に入れた。試料の数は,7地点,5深さ,2トランセクトの70個であった。

表1はUSDAハンドブックNo.60に出ている塩濃度と作物への影響を示した表である。図1は生育不良の図2は生育良のトランセクトに沿った深さ別の飽和抽出液のECである。図中の点線は綿花栽培の上限である8 dS/mを示している。生育不良のトランセクトでは多くが8 dS/mを超えているが,生育良では特に0~5 cm深のECは1カ所を除き8 dS/m以下というように,一筆の畑の中における塩害のバラツキを良く表している。

 

画像の説明

 

画像の説明

 

画像の説明

 

5.残されたこと
 図1,2に示された値を既往の報告と比較するとき,問題になるのはペーストの飽和抽出液の電気伝導度と今回のように吸引した飽和抽出液の電気伝導度を同一と見なして良いかどうかという点である。

powered by Quick Homepage Maker 4.91
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional